日本に住む外国人が増えている中で日本で出産・育児をする人も増えています。異国での慣れない育児にストレスを抱えつつも相談する場所が無い。その結果、未就学児童の問題へ発展することもあります。その前に外国人保護者が少しでも安心して子供を育てられるように工夫しているまちづくりの例を紹介していきます!
外国人保護者が直面する問題
子育てのストレス
子育てからのストレスはどの親でも感じるものだとは思いますが、海外での育児は特に孤独に感じやすく、外国人保護者ならではのストレスの種となるものがいくつもあります。
例えば、
・言葉がよくわからず子育てに関する情報が集められない。
・母語で本音で話せる友達が近くにいない。
・自分の生まれた環境と社会が全く違うので過去の経験が役立たない。
・母国でなら自分でできることも現地人であるパートナーに頼らないといけない。
・義母と子育ての方針が合わず日本のやり方を押し付けられる。
・子供の日本語の方が上達が早くて母国語が通じないのが悲しい。
などです。身近に自分の両親がいないということも、身内に頼りづらく、よりストレスを抱える原因となりそうです。
日本独自の学校文化
日本人保護者ですら、自分の子供が小学校にあがる時には不安になると思います。
そして、外国人保護者は言語の壁や日本の小学校に通う実体験が無い中で、より大きな不安を抱えることは容易に想像がつきますね。
入学準備
以下は入学前に必要な準備リストです。
《文房具》
・筆箱 ・鉛筆 ・消しゴム ・クレパス ・色鉛筆 ・はさみ ・のり ・下敷き ・折り紙
・粘土《身のまわりのモノ》
・ランドセル ・上履き ・上履き入れ ・体操服・赤白帽 ・体操着入れ ・給食袋(箸・スプーン・ナフキン・マスクなども) ・防災頭巾
リビナビ.jp
このようなリストが自治体から配布されたり、学校説明会で説明があるのですが、「下敷き」や「上履き」「赤白帽」「防災頭巾」など、日本に長く住んでいても聞きなれないであろう言葉が見られます。
さらに、ここからサブバックのサイズや色の指定、鉛筆の太さ(2B)や筆箱の指定(布製や缶製はNGなど)、体操服は学校指定のものなど、細かいルールがあることも多いです。
PTA
そして、入学後には、連絡帳による保護者への連絡やPTAへの参加などが求められます。特にPTAでは日常生活では耳にしない用語が飛び交うので、外国人保護者が日本人保護者と同様に参加するのにはかなりハードルが高いです。
例えば、世田谷区PTA用語集には 「遊び場開放運営委員会」「学校関係者評価委員会」「常任理事校・常任理事」「単P」など、日本で生まれ育った私でも意味が分からない言葉がかなりありました。これらの用語をふりがな無しで完全に理解できる外国人保護者は何割程度いるのでしょうか。
さらに、Eテレ・ウワサの保護者会によると、いわゆる「出稼ぎ」で日本で働いている外国人保護者の多くは派遣労働者です。PTAに参加するために「休みをお願いします」と派遣会社に頼むと、「じゃあ、明日から来なくていいよ」と返されることもあるそうです。
これらの事情があるにもかかわらず、それを知らない日本人保護者からは「日本語を話せるのにPTAでは分からないと言う。」「PTAに一回も出席しない。」などと誤解を受け、学内での保護者同士の交流にも壁ができてしまうのです。
豊中市・とよなか国際交流協会について
豊中市
✔大阪府北部の豊能地域
✔大阪の中心から電車で10分程度とアクセスが良好
✔ 人口は約40万人で、大阪市、堺市、東大阪市に次いで府内第4位の人口を擁している
✔そのうち、約1.5%の約6,100人が外国人
✔ダイハツの自動車工場で働く技能実習生や、大学に通う留学生、研究者、またその家族などが多く見られる
✔地域市民主体の活動が活発
とよなか国際交流協会
✔〒560-0026 大阪府豊中市玉井町1-1-1-601 「エトレ豊中6階」 阪急・阪神・大阪メトロ各梅田駅・JR大阪駅よりお越しの場合(約11分)
✔1993年に設立
✔とよなか国際交流センターの指定管理者
✔事業の3つの柱
【①多様な人々が尊重される地域づくり】
【②周縁化される外国人のために総合的なしくみづくり】
【③学校とつながってつくる豊かな未来】
とよなか国際交流協会の活動
おやこでにほんご
「おやこでにほんご」は親子参加型日本語教室で、子どもを連れて集える情報交換の場となっています。ボランティアとして参加している子育て中の日本人親子や外国人先輩ママとの友達づくり、出会いの場となっています。
交流の一環として、絵本の読み聞かせ、お料理教室や手作りのおもちゃを作ったりするイベントもあります。「おやこでにほんご」のFacebookをチェックしてみると、やさしい日本語と英語で情報が書かれており、クリスマス前にはクリスマスのクラフトをつくるイベントが開かれていました。
親同士の交流ができ、日ごろの悩みを相談・解決できる場となっていることはもちろん、子ども同士の交流の場となっており、日本人ボランティアの子どもにとっても外国人の子どもにとっても幼いころからともに遊ぶ場となってこれからの多文化社会の将来が明るく感じられます
より良いアクセスのために
とよなか国際センターは大阪駅から約10分と、アクセスが良いです。ですが、それでも足が遠のく外国人保護者も多いそうです。そこで、豊中市内3か所の図書館を利用して、よりアクセスしやすいように工夫されました。外国人保護者にとって、図書館は公共施設であるためイメージしやすく安心できるのです。
「おやこでにほんご」を図書館で開催するほか、司書さんによる読み聞かせや保健士さんによる外国人保護者へのセミナーを行うなどを行っており、これらが図書館側にとっても多文化への理解につながってより良いサービスの考案へも繋がっています。
今後の課題
オンラインでの活動
コロナ禍にある現在、大人数で集まることができません。屋外でイベントを行うなどの工夫もされていますが、感染の危険からイベントに参加することをためらう保護者ももちろんいます。そのよう方々を孤立させないためにオンラインを利用してどのようにすればいいのかが、現在の大きな課題点となっています。
事業者 / 地域との連携
図書館の例でもあったように、地域と連携してイベントを開催することは地域の多文化への理解につながりまず。外国人は安心感を得られ、地域社会は外国人のニーズを理解することもできます。
公共施設を利用したイベントのほかにも、地域のお祭りで母国の食べ物や音楽などを紹介できるような場が増えても楽しそうですね!
最後に
今回の記事では「外国人保護者」にフォーカスして、とよなか国際交流協会が主催する「おやこでにほんご」という、公共施設を利用して「まちづくり」をしていきつつ、外国人保護者がママ友・パパ友をつくる場にすることで個人へのサポートにもつながる、という例をご紹介させていただきました!
とよなか国際交流センターでは他にも外国にルーツを持つ子供の居場所をつくる場や、若者支援事業にも力を入れています。
多文化社会へ興味がある方、在日外国人のサポートに興味がある方、「こんな支援の方法もあるんだ!」と学べるはずです。興味のある方は、是非チェックしてみてください!
最後までご覧いただきありがとうございました!
執筆者 みはる
愛知県出身、現在大学3年生。英語好きから始まり大学では国際教養学部に所属。在日外国人労働者が抱える問題を勉強しています。