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【これが『面白い先生』だ!】数学好きを増やしたい。楽しい授業はこうして生まれる

person holding a chalk in front of the chalk board
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 『逆転現象が好きで、普段思うように点数をとれない子がこのコンテストで下剋上するのが楽しいんです。 教員を目指している人って、幼稚園から大学までずっと「学校社会」にいたのに、大学を卒業してすぐに先生になったら、もう一生学校社会の中で生活することになる
「種をまくこと」「水をやること」を大切にする中学校教師が考える教育の在り方を伝えたい。

岸順一先生
 中学校教師として24年間、数学の教師をしている。現在赴任している都内の中学校では数学の授業を9クラス担当しており、進路指導などにも携わっている。


岸先生が教師になるまで


ゆうき

 本日はよろしくお願いいたします!早速ですが、岸先生が中学校教師になるまでについて教えてください。

岸先生

 よろしくお願いします!
 私は、大学の教育学部を卒業した後に2年間働き、5年間非常勤講師をしてから教員採用試験に合格して現在まで中学校教師をしています。いやー。当時は教採って本当に倍率が高くて、6回も受けることになるとは思っていませんでした。


大規模イベント事業の立ち上げ


あそび
ゆうき

大学を卒業してからの2年間はどのようなお仕事をしていたんですか?

岸先生

 『チャレラン情報センター』という会社の立ち上げに関わっていたんです。小学校の先生を中心に発足された「日本子どもチャレンジランキング連盟」(現在はNPO)という教育団体の事務局という位置づけでした。

ゆうき

 こどもちゃれんじ…
 ベネッセとのコラボレーションですか?

岸先生

 それとはまた別(笑)。
簡単に説明すると、「子どもたちを遊びの中でたくましく成長させよう」を目標に、子どもの健全育成を目指した団体。「誰が1番遠くまで靴を飛ばせるか」を競ったり、「雑巾がけレース」など、身の回りにあるものだけで子供たちが参加できるオリンピックのようなものを企画・運営する会社で働いていました。まあ、いわゆるイベント屋さんですね。200以上の種目があるんですが、今では「栗拾い集め」とか「洗面器まとめ投げ」とかもやっているらしいよ。

ゆうき

 なんだか楽しそうな会社ですね!小学生が普段何気なくやっていることを競技にするという発想が素敵です。


 何か教育に直結したお仕事をされていたのかと思ったら、、なんだか気になる要素ばかりでたくさん質問したくなります…!!


岸先生

 とても面白かったよ。幕張メッセで大規模な大会も運営したこともあったし。

 そこの社員になったのは、ゼミの先生からの紹介がきっかけなんだけど、その先生に言われた言葉にとても影響を受けたんだよね。


「学校社会」から飛び出す!


ゆうき

 先生から何と言われたのですか?

岸先生

 『教員を目指している人って、幼稚園から大学までずっと「学校社会」にいたのに、大学を卒業してすぐに先生になったら、もう一生学校社会の中で生活することになる』って言っていたんだよね。すぐに納得しました。『最終的に先生になる夢は叶えてほしいけれど、その前に「学校社会のソト」を見てきてほしい』と言われたんです。

ゆうき

 なるほど…。考えてみれば、義務教育を終える→高校、大学で教職課程をとるために勉強する→学校の先生になる。ずっと学校というコミュニティの中にいることになるんですね。もちろん学校社会において得られる知識も多くあるとは思いますが、実際にソトでその会社の立ち上げに関わってみて、どのような気づきや発見がありましたか?

岸先生

 何と言っても、あの頃は今のように起業する若者が少なくて、23、24歳の未熟な若者が何千万円規模の取引を任されるなんてことはありえなかったから、とても貴重な経験が出来たと思っています。今は多くの企業で若者が責任ある仕事を任される機会は増えた方だと思う。たったの2年間で営業、企画、MCなどを経験したし、世の中のことや、お金の回り方もたくさん教えてもらったよ。

ゆうき

 すごいですね!確かに、大卒で教師になった場合には見ることのない世界に飛び込んで幅広く知識を得られたように感じます。それでは、どのようなタイミングで次の職業である非常勤講師になられたのですか?

岸先生

 もともと入社するときに、教師を目指していることを伝えていたので、2年経つ頃に社長から、ここでこのまま働き続けたら一生教師になれないぞと言われました。 そこから、もう一度自分の本当の夢である教師になるための道を歩き始めました。

 でも、すぐには試験に合格できなかったので、非常勤講師として5年間、勉強をしながら都内の中学校で数学を教えていました。週に22コマくらい教えていた時もありましたね。


5年間の非常勤講師時代


教室
ゆうき

 非常勤講師として数学を教えていたころのお話をお聞きしたいです!

岸先生

 非常勤講師はパートと同じようなものだし、何の保証もなくただ教えるだけという印象がありました。しかし、この「ただ教えるだけ」が私にとっては大きかったんです。
 だって、自分の授業のことだけ考えていればいいんですよ。どんな授業にしたいだとか、どんな風に教えようとか。本当の教師になってしまったら、こんなに授業のための時間は割けないので、私はこの5年間で思う存分数学と向き合い、自分流の授業展開について深め、自分のための勉強が出来ました。

ゆうき

 生徒の感覚だと、「学校の先生=授業をするのが仕事」というイメージになりがちですが、教師のお仕事は他にも数え切れないほどありますよね、、

岸先生

 そうなんです!学校の先生というのは、全体の仕事のうち授業のために使える時間は多くて2割残りは、校内で分掌している仕事や学級・学年経営でいっぱいいっぱいですよ。
 この5年を経て思うことは、やはり大卒ですぐに教師になった人はすごいな!ということです。何もかも初めての仕事ばかりで大変なのに、どんなに新人でもベテランの教師でも、中学校の授業は皆同じ50分ですからね。


6回目の試験に合格、憧れの中学校教師に


ゆうき

 教員採用試験に合格し、ついに念願の中学校教師になってすぐの頃は
どのような心境でしたか?

岸先生

 ほとんどの中学校の教師は、初任の年は副担任としてスタートします。全てにおいて非常勤の頃とは違って、先生として「こうすべきだ」「こうあるべきだ」といったような教えが多すぎて大変でしたよー。ただ、それまでに積んできた人生経験は大いに活かせていると思っています。普通なら事務作業で忙しすぎて、授業内容を考えるのは夜中だったりするのですが、非常勤講師時代にたくさん授業をさせてもらったおかげで、教材研究や授業研究に時間を取られずに済むようになりました。

 ちなみに2年目からは1年生クラスの担任になり、そのまま3年生まで教えて、またその次に入学してきた学年を最後まで見させてもらいました。


全校で「数楽コンテスト」開催


数楽コンテスト
ゆうき

 これは岸先生がつくった完全オリジナルの数学のテストだと聞いたのですが、
表紙を見ただけで興味をそそられます!

 「数学」ではなく「数楽」というタイトルが面白いです。数学を楽しく解くことをモットーにされているのですね!

岸先生

 これは1つ前の中学校で教えていたころに計10回実施した、数楽コンテストです。
 ほら、よく小中学校で英単語とか漢字、計算をひたすら解くテストとかあったでしょ。私の考えですが、計算力と数学力は違うと思っているんです。
 逆転現象が好きで、普段思うように点数をとれない子がこのコンテストで下剋上するのが楽しいんです。だからこれは、長期休み明けの最初の授業という何の準備もしていないであろう日とかにやります!

問題1
ゆうき

 ありましたねー。そういう抜き打ちテスト(笑) 私は嫌いでした。でも、このコンテストは私が受けたことのあるテストと少し違う雰囲気を感じます。問題文が、絶妙に興味をそそる内容ですね。

岸先生

 普段からこういう問題作りのためのアンテナを張ってますから(笑)

 このテストは成績も授業も一切関係ないです。生徒に伝えたいのは、「あ、こういうのも数学なんだ!」という気づきや、「数学苦手だし、点数もとれないけど、普段よくみる現象も数学で解けるんだ!」という発見です。

問題2
ゆうき

 確かに、数学に限らず、「この勉強は一体いつ役に立つのか?」「社会に出たときに使える知識なのか?」という疑問を持ってしまったら最後、なかなか勉強へのやる気が入らないものですよね。この出題の仕方を見ると、あえて普段の生活によく起こる現象が問題にされているので、なんだか解いてみたいと思えます!


岸先生の考える「中学校教師」とは


芽
岸先生

 私たち教師が出来ることと言えば、『種をまくこと』と『水をやること』だと思います。

 だって、中学生の時点で芽なんて出なくて当たり前ですから!私の数楽コンテストに参加して、数学が面白いなって思ってくれればいいのです。成果なんてすぐには出なくていいので、長い目で、面白いことに気付いてほしいと思っています。

ゆうき

 結果主義ではなく、過程の部分を支えてくれる先生ほど信頼のおける人はいません…!私も、岸先生のもとで数学を学びたかったです。

 ちなみになのですが、岸先生のもとで数学を勉強した学生が、実際に成果を出した瞬間に立ち会えたことはありますか?

岸先生

 今は、東京都の任用制度の「指導教諭」という立場で、年に3回、「模範授業」という公開授業をしています。もう6年目になりますね。とても驚いたことがあって、以前その模範授業に、「数学の先生になりました」と自分の教え子が見学に来たんです。この時もまた、教師としてのやりがいを感じました。

教職員の指導体制の充実:文部科学省

ゆうき

 すごいですね!その生徒はきっと、岸先生に教わってから芽が出て、教師の道を進んだのではないでしょうか。


学校社会のソトから得たもの


ゆうき

 1番最初の子供のオリンピックの話題に関連して…学校社会のソトを見てきた岸先生は、ご自身が自信を持って言える、「全国の教師の中でこれなら自分が1位をとれる!」と思う点はありますか?

岸先生

 面白い質問だね…。そうだな、『教育に関わること以外のことを幅広くやってる選手権』なら1位になれるかもしれない!

 過去の社会人生活で学んだことも、今所属しているすべてのコミュニティで出会う人のことも、教育とは全く関係ないように見えますが、それを教育に「繋げる」ことが好きです。「数学は積み重ねだ!」という話はよく聞きますが、積み重ねではなく、もっと大きなところから課題解決のために数学の知識を身に着いていってほしいと私は思っています。

岸先生

 実際に海外で存在する事例なのですが、生徒たちでゼロから小屋を作ろうとしたときに、まずはどこに立てるかを考えたり、設計図を描いたりしますよね。そのためには正確な数値が必要だったりして、そこで生徒たちは数学を学ばなければ課題を達成できないことに気づくのです。


将来の目標は、『自分の学校』をつくること


ゆうき

 貴重なお話をありがとうございました!
 最後に、岸先生の将来の目標を教えてください。

岸先生

 自分で学校を経営し、理想とされている教育を実現することです。日本では、文部科学省の認定がなければ学校は建ちません。そして、日本全国どこの学校へ行っても同じような教科・カリキュラムを受けられる環境にあります。
 これは良いことでもありますが、時代的にはそうではない学校が存在してもいいのではないかと私は考えています。人間は知らない→知りたいと思う生き物なので、その本能を打ち消さず、本質をついた教育を作り上げるのが、今の私の夢です!


おわりに


 皆さんは学生時代に、「この先生の授業は面白いから好き」という経験はありませんでしたか?
 私は、学生からそういった評価を得られる先生の話には、他にはない人生経験やそこから知った価値観が影響していると感じ、今回 岸先生にインタビューさせていただきました。生徒を第一に考えながらも、自身の興味関心を追求していく先生のさらなるご活躍が楽しみです!

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執筆者 ゆうき

千葉県出身、大学3年生。スペイン語学を専攻しています。趣味はダンスと書道で、現在は社会に出た際に直接活かせるSNSの運用について勉強中です。マイウェイ部ではライターとして記事の執筆をしています。